令和2年度入学式式辞
ただいま、入学を許可いたしました200名の新入生のみなさん入学おめでとう。私たち松江東高校の教職員は皆さんの入学を心より歓迎します。
本日は新型コロナウィルス感染予防のため、残念ながら来賓の皆様と多くの在校生の皆さんには出席を見合わせていただきましたが、このような形であっても、入学式を実施できたことを校長として、うれしく思っています。
保護者の皆様、高いところからではありますが、一言お祝い申し上げます。お子様のご入学、誠におめでとうございます。心よりお喜び申し上げます。皆様のご期待にお応えすべく入学生の皆さんがこれから本校で歩む「自立への道程(みち)」を本校の教職員は全力で支援していきます。
本校は、昭和58年設立、今年で38年目の若い学校です。「高い知性と、すぐれた人格を備え、心身ともに健全で、人間性豊かな人材の育成をめざす」という教育方針のもと、この3月の卒業生で1万名を超える若人を、社会に輩出してきました。

今高校生には、これからの社会を生き抜くために、答えのない問題を、他者と協働で解決していく力が求められています。本校は昨年度から文部科学省の「地域との協働による高等学校教育改革推進事業」を実施し、「地域共創人」を育成したいと考えています。
「地域共創人」とは、「地域社会の未来に向けて挑戦する人」「他者と協働して新たな価値を創造する人」、また「夢を見つけ、その夢に向かって挑戦する人」と考えています。そのような人になるために、本校では3つの力、「人とつながって生きる力」「自己の未来を切り拓いていく力」「地域社会の今と未来に関わる力」を伸ばしたいと考えています。この3つの力を伸ばすために、教科の授業、総合的な探究の時間、部活動などすべての教育活動で、「主体的・対話的で深い学び」に取り組んでいってほしいと思います。入学生皆さんに東高のモットーである「師弟同行」で力をつけてもらいたいと思っています。

さて新入生の皆さんに、お願いしたいことがあります。松江東高校での3年間の中で、ぜひ見つけてもらいたいものがあります。それは「未見の我」というものです。「未見の我」とは、皆さん自身がまだ理解していない、今まで自分が見たことのない自分自身のことを言います。卒業する時までにそれを見つけてもらいたいと願っています。
ここで、安積得也(あづみ とくや)さんの「未見の我」という詩の一部を紹介します。   
  (前略)  内に隠れて見えないけれども
       現在(いま)こそ内に眠り 底に潜んで
       自分にも他人にも発見(わか)らないけれども
       五尺の我のうちにこそ             
       未見の我の偉大な姿が隠れているのだ
       ありがたや
       自分の中には自分の知らない自分がある
       強くして能あり                
       清くして正大なり               
       現在の我とは比較にもならぬ
       未来相の我だ
       私はもう私を見くびらない 
                弱小の私 無能の私
                あやまち多い私
                しかし私は未見の我の故に 
                私の全身全霊を愛惜する(後略)
                                                            (詩集『一人のために』1932年より)
これから三年間の松江東高校での生活を通して、自分の力で自分の中に秘められている、今の自分も知らない未知の力、限りない可能性をみつけることを目標にしてもらいたいと思います。
毎日を何となく過ごすのではなく、自分自身で大きな志を持ち、目標に向かって挑戦し続けてほしいと願っています。自分にとって少し困難な目標を立て、目の前のことに真剣に粘り強く取り組み、「未見の我」を発見してください。私たち松江東高校の教職員も前向きに頑張る皆さんに対してしっかりと支援していきたいと思っています。
 
また、皆さんに大切にしてもらいたいものが二つあります。一つ目は「現在の我」です。今の自分が、仮に先ほどの詩の中にあるように「弱小で」「過ちが多い」人間であると思っても、未見の我を知る時が来るまで、「自分は価値のない人間だ」などと思わす、自分自身を大切にしてください。
大切にしてもらいたいものの二つ目は、皆さんの周りにいる同級生です。同級生一人ひとりにもその人自身も気がついていない「まだ見ぬ彼(彼女)」が眠っているのです。 私は皆さんが自分自身を大切にすると同時に、「未見の彼(彼女)」を持つ同級生も大切に思い、豊かな人間関係を作り、互いを高め合う心の通った切磋琢磨に励んでくれることを願います。今年の入学生は県内外二十三の中学校から本校に来ています。ぜひ、新たな出会いを大切にして、良い仲間を作ってください。
皆さんはこの松江東高校において、自分自身と友人を大切にして、何事に対しても真剣に粘り強く取り組み、今までの自分が知らなかった自分を見つけて下さい。
皆さんの高校三年間は皆さんの長い人生の中でほんのひと時かもしれませんが、これからの皆さんの生き方を左右するとても大切な時です。皆さんがしっかりと自分を鍛え、将来大人になった時に、自分の人生の原点は松江東高校だったなと思えるようになって欲しいと思っています。

なお、最後になりましたが保護者の皆様へ一言ご挨拶いたします。ただいま二〇〇名の新入生をお預かりしました。これから三年間、私たち教職員は皆様の期待に応えられるよう最善の努力をしたいと思っていますので、よろしくお願いします。
また生徒の皆さんの成長のためには、家庭と学校の連携が欠かせないことはいうまでもありません。どうか本校の教育へのご理解とご協力をお願いして、入学式の式辞といたします。

令和2年4月9日
島根県立松江東高等学校
                           校長 野 々 村  卓