2学期始業式講話 「突き抜けるような取組」


 皆さん、おはようございます。夏休みが終わりました。夏休み、どう過ごしていましたか。7月終わり頃から、新型コロナウイルス感染症が急拡大したことは皆さんも知っていることと思います。昨日、緊急事態宣言と蔓延防止等重点措置地域が拡大されて、全国で29都道府県が指定を受けることとなりました。全国47都道府県のうちの約60%が指定を受けていることになります。これは、変異株であるデルタ株が猛威を振るっていることが原因のようです。この変異株は以前のものに比べ感染力が大幅に強くなっています。ワクチン接種如何に関わらず、安心できる状況になるまでは、気を抜かず、本日配布の保健だよりに掲載しているように、マスク着用、手洗いなど引き続き感染症対策を徹底してください。


 さて、先日、うれしい知らせが届きました。1学期終業式で紹介した君たちの先輩、玉川康平さんが、スポーツ誌「Number」のWeb版に掲載されました(URL https://number.bunshun.jp/ → バスケットボール)。NBAファイナルでは、残念ながら2勝4敗で破れたそうですが、現在、来年に向けて、もっとよくなるためにどうすればいいかを考え、新しいチャレンジを行っているとのことです。そんな彼が、強調していたのは、「変わり続けないと乗り遅れる」という言葉でした。厳しいスポーツの世界での言葉ですが、全力を尽くして挑戦している彼の姿が思い浮かべられます。先日終了したオリンピックでも、連日、アスリート達の躍動するシーンが画面に流れていました。彼らに共通しているのは、本気で、そして全力で取り組んでいる姿です。


 脳科学者:茂木健一郎氏は、脳の成長に大きく影響するのは、勝負の勝ち負けや成功・失敗の体験ではなく、それが全力を尽くした結果であるかどうかであると、その著書「プロフェッショナル達の脳活用法2」の中で述べています。全力を尽くしてない状態では、失敗したとしても「余力を使えば成功する」可能性が残されることになり、脳は本気にならないそうです。これ以上のことはできないと思えるほどやりきること、それが本当の意味で自己の成長を促してくれるのです。このことはオリンピックのアスリートを見ても感じられることと思います。

 また、先日、松江市長の上定昭仁氏にお会いした際、上定氏は自らのご経験から 「高校生だからここまでと勝手に限界を決めたりせず、突き抜けるような取組をしてもらいたい」とおっしゃっていました。アメリカでは限界を作らずに取り組むことは当たり前になっているが、日本では「高校生だから」とか、「自分はどうせ・・・だから」とかいうように、どうしても自分で限界を決めてしまい、挑戦する心を抑えてしまう傾向があるとのことです。似たような事を、アップルの創業者スティーブ・ジョブス氏も述べています。彼はアメリカのスタンフォード大学の卒業生に対し、「Stay hungry, stay foolish.」と言ったそうです。直訳すると、「いつもハングリー精神を持て、そして愚かであり続けろ」というメッセージになりますが、この「愚か」というのは常識にとらわれるなという意味のようです。何か行動を起こすとき、それが将来につながる確証はもちろんありません。それでも、「現在の点がやがて将来の点につながると信じて自分の信念に従って進みましょう」ジョブズ氏はそのように伝えたかったようです。これを、君たちの日常の学びに当てはめると、「1日1日の学び、それが自分の将来とどうつながるかわからないけど、つながることを信じて自分の信念に従い、今を全力で取り組む」ということになるのではと思います。

 ところで、7月29,30日に松江商工会議所が企画した「キラ星共創プロジェクト」の企画審査会がありました。1組につき5万円の資金提供が行われるプロジェクトですが、5組の募集に対し2,3年生10組の応募があり、東高生の意欲の高さに感心しました。一方で、不採用の組が出たらどうしようという心配もありましたが、最終的には10組すべてが採用となりました。その理由は、発表した人たちが皆、真剣に、一生懸命プレゼンをしていたこと、そして、「企画としては不十分なものもあるが、不十分であるが故に想像を超えた可能性もあり得る、その可能性に賭けてみたい。」という審査員の思いがあったからのようです。今年の学園祭のテーマ、「煌、Be crazy, be you」にも、「常識にとらわれず、自分らしい煌めきを放とう。」というメッセージを感じます。君たちの工夫と努力を大いに期待しています。

 最後になりますが、まずは、自分の体を大切にして欲しく思います。事故に巻き込まれないようしっかりと注意したり、感染症対策を徹底したりすることで、命を危険にさらすことがないよう十分に注意してください。また、自分の命と同様に他者の命も大切です。自転車の乱暴な運転等によって自分の命だけでなく他者の命を危険にさらすことがないよう、改めて十分注意しましょう。お互いに自他の人格を尊重し、助け合いながら歩んでいく、この理念こそが本校の「師弟同行」の考え方であると思っています。

 そして、これから始まる1年で最も長い2学期、東雲祭や部活動の新人戦など行事が盛りだくさんな上に、3年生にとっては自己の進路決定に関わる重要な学期でもあります。「もう少しやれればあそこまでいけるけれど・・・」などというような言い訳を考えるのではなく、「これ以上はできない」と自信を持って言い切れるほど、できることを全てやり、君たちが大きく成長する学期であって欲しく思います。