島根県立松江東高等学校  

入学式式辞

2008年6月25日

2008年4月8日、入学式の式辞です。

新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。
心からお待ちしていました。
保護者の皆様、ご家族の皆様、おめでとうございます。
心よりお祝い申し上げます。
236名の新入生の晴れやかな姿を見守るために、ご臨席をいただきました、三島PTA会長様をはじめ、ご来賓の皆様に、高いところからではございますが、心からお礼申し上げます。
ありがとうございます。
さて、新入生のみなさんに、校長として心をこめてお話したいことがあります。
先月、3月18日の山陰中央新報に、
「夢咲かせ 2008年春 さんいんの若者群像」
という特集の第1回が載っていました。
「不登校乗り越え看護師目指す  渡部展子さん」という題名でした。
今年の松江北高校の通信制の卒業生は189名だったそうです。
1年で卒業する人もあれば、20年かかって卒業する人もあります。渡部さんは入学から6年で卒業。中学校では学校にとけ込めず不登校になったそうです。
通信制に通いながらも、アルバイトを言い訳に学校に足が向かわない日々が続いたある日、バイト先の先輩の一言が彼女を変えたと言います。
「一人で生きているような顔をして、甘えるんじゃない」
その時から、彼女は毎週のスクーリングを一日も休まなかったと言います。
出会いは人を変える。
正確に言うと、本物との出会いのみが人を良き方に変える。
新入生のみなさん。
今日、あなたたちは、新しい出会いをしました。
この出会いを、本物の出会いとすることで、この松江東高校において自分を大きく変えてもらいたい。私がまず、みなさんに申し上げたいことはそのことです。
さらに、渡部さんがこんなことを言っています。
「あきらめなければ人生は切り開ける」
中国の古代に「論語」という書物が書かれました。孔子という思想家の行いや言葉を集めたものです。
孔子の弟子の冉求(ぜんきゅう)が言います。
私は力が足りないので、先生にはついて行けません。
孔子が答えます。
力の足りないものは進めるだけ進んで中途でやめることになるが、
今、おまえは自分で自分に見切りをつけている。
原文では、
「今、汝(なんじ)は画(かぎ)れり」となっています。
つまりはこういうことです。
人間は思うようにいかないこともあれば。挫折してしまうこともあります。、
でも、そういうときの多くは、力が足りないからではなくて、自分で自分をもうだめだと見限っているからなのです。
渡部さんの「あきらめなければ人生は切り開ける」という言葉も、孔子の「今、汝、画れり」も同じことの裏返しのことを言っていると思います。
私たちは生かされている命を生きています。
生かされている命であるならば、可能な限り大切にしたい。
それは、健康や安全に心して生きるということだけではありません。生かされている命をあきらめないで、自分で自分を見限ることなく生きることでもあるのです。
しかしながら、そうは言っても、くじけてしまいそうな時もあるにちがいない。
どうしてもうまくいかない時もあるかもしれない。
そんな時、松江東高校は決してあなたたちをひとりぼっちにはしない。

第二次世界大戦。もう60年以上も前のことになりました。
ドイツ軍がフランスに攻め入り、フランスの大学はみんな学問の自由を奪われました。
そのとき、ルイ・アラゴンという詩人が、
「ストラスブール大学の歌」という長い詩を書きました。
その中のわずか二行が一人歩きして、さまざまなところで引用されています。
複数の大学の大学案内にも使われています。
それはこのような一節です。

    学ぶとは 誠実を胸に刻むこと
    教えるとは 希望を共に語ること

  学ぶとは 誠実を胸に刻むこと
    教えるとは 希望を共に語ること

あなたたちも私たちも学ぶことに誠実であらねばなりません。
心を素直にして、学ぶことに誠実であるとき、人間は最も多くのことを、最も深く学ぶことができます。
そうして、
教えるとは希望を共に語ること。
なんとすばらしい一行と思いませんか。
教えることが、教わることが、
希望を共に語ることだという在り方に私は感動すらおぼえます。
学校とはそういう空間だと思います。
学校というところは、
誠実に学ぶ人と情熱をもって教える人が、
希望を語り合うところなのです。
あなたたちが教室で授業を受けるとき、あなたたちは先生たちと、ごくあたりまえに希望を語り合っているのです。
授業はあななたちの可能性を拡げてくれます。
あなたたちが、友だちのこと、勉強のこと、部活のこと、進路のことなどなどを担任の先生に相談する時、それもやっぱり希望を共に語り合っているのです。
部活動で、二年生や三年生を見て、あんなふうに強くなりたい、あんなふうにうまくなりたい、ああいうふうに細やかな心遣いのできる人になりたいと思ったとしたら、そのとき、あなたたちは上級生と無言のうちに希望を語り合っているのです。
松江東高校は「希望を共に語り合う」ということにおいて、いかなる支援も惜しまない学校であると私は信じて疑いません。
松江東高校は「希望を共に語り合う」ということにおいて、あなたたちを決してひとりぼっちにはしない学校であると自信をもってお伝えしたい。
言い方を変えれば、あなたたちも決して、友だちをひとりぼっちにしないでもらいたい。
新入生のみなさん、松江東高校というこの学校で自分の将来を確かなものとするために、共に希望を語り合いましょう。
保護者のみなさま、保護者として学校と希望を共に語り合う関係でありましょう。
ここに集(つど)うすべての人々が希望を共に語り合う人間同士でありましょう。